第8回「プレーオフには、ドラマがある」フットゴルフをやってきたものは一度は思うはずだ、あの場で優勝を決めたい。
スポーツには、「終わり方」がある。
スコアが並び、順位が確定し、
静かに結果だけが更新されていく試合もあれば、
その一瞬にすべてが凝縮される終わり方もある。
フットゴルフにおいて、その象徴がプレーオフだ。
ウィニングパットが存在しない世界
現在のジャパンツアーでは、1位タイの選手が出た場合のみ、1ホールのプレーオフが行われる。
それでも決着がつかない場合は、5本のペナルティシュートアウトによって勝者が決まる。
これは合理的で、1日完結の大会としては非常に整理された仕組みだと思う。
ただ、フットゴルフという競技の特性上、ひとつの特徴がある。
それは、「ウィニングパットが存在しない大会がある」ということだ。
組み合わせはランダム。
同組で優勝争いをしているとは限らない。
気づけば誰かがスコアをまとめ、静かに順位が確定している。
それはそれで、フットゴルフらしい形でもある。
プレーオフという“別の競技”
しかし、プレーオフに入った瞬間、空気は一変する。
負ければ、その場で終わる。
出場している選手が見守る中、ひとつのボールにすべてが託される。
普段のラウンドとはまったく違う、もうひとつの競技が始まる。
あの緊張感。
あの静けさ。
そして、決まった瞬間に爆発する歓声。
プレーオフには、確実に“ドラマ”がある。
あの時代のプレーオフ
かつては、5位タイまでプレーオフが行われていた時代もあった。
何人もの選手が、ひとつのホールに集まり、順番に蹴り、削られていく。
あの独特の空気感は、今でも忘れられない。
そして自分自身も、何度かその場に立ったことがある。
ちなみに、自分のジャパンツアー初優勝は、プレーオフで決めた。
あの一蹴りの重みは、今でもはっきりと覚えている。
忘れられないシーン
いくつか、強く記憶に残っているプレーオフがある。
ひとつは、2019年10月27日。
ビクセンオープン in 軽井沢。
峯尾選手が放った、信じられないようなロングバーディ。
ボールがカップに吸い込まれた瞬間、会場の空気が一気に弾けた。
歓声。
ざわめき。
そして、崩れ落ちる本人。
その光景を見ながら、自分も、なぜか涙が出そうになったのを覚えている。
もうひとつは、2024年のアジア杯。
団体戦、日本 vs マレーシア。
この試合はマッチプレー形式で、代表3人によるシングルマッチで決着をつけるレギュレーションだった。
1対1で迎えた最終戦。
熊倉選手が放った、およそ15メートルのパット。
あの一打が入った瞬間、勝負はほぼ決まったような空気になった。
実際には、その後マレーシアの選手が外したことで勝利が確定したのだが、記憶の中では、あのパットがすべてを決めた瞬間として刻まれている。
それくらい、強烈な一打だった。
そしてもうひとつ。
2018年10月、第39回ジャパンオープン。
記憶は少し曖昧だが、18ホールを終えて4人が1位タイで並んだ。
そこで採用されたのは、通常のホールプレーではなく、「ブラインドアプローチ」という、非常に特殊なプレーオフ形式だった。
決められた位置から、1人ずつボールを1回だけ蹴る。
最もカップに近づけた選手が優勝。
ただし、そこにはひとつのルールがある。
他の選手のプレーは見ることができない。
どこまで寄ったかも分からない。
そして観客も、そのプレーに対してリアクションをしてはいけない。
完全な静寂の中、それぞれが自分の一蹴りにすべてを委ねる。
あの独特な空気感は、今でも鮮明に覚えている。
全員が蹴り終えたあと、それぞれのボールの位置にはマーカーが置かれた。
その位置を確認するために、選手、マーシャル、そして観客が一斉に移動する。
静かに、ゆっくりと、結果へ向かって歩いていく時間。
そして、ガナドールの選手が叫んだ。
その一言で、山縣祐人選手の優勝が決まった。
その瞬間、空気が一気に解放される。
チームメイトが駆け寄り、祝福する。
あの光景は、今でも強く印象に残っている。
ドラマが生まれる場所
プレーオフには、独特の緊張感がある。
ただ順位を決めるための延長戦ではない。
そこには、その大会を象徴するような感情が生まれる。
歓声も、静寂も、崩れ落ちる姿も、駆け寄る仲間も、すべてがその一瞬に凝縮される。
だからこそ、プレーオフにはドラマが生まれる。
そしてフットゴルフをやっている以上、きっと誰もが一度は思うはずだ。
静まり返った空気の中で蹴る一打。
大勢が見守る中で決まる勝負。
その先にある歓声。
フットゴルフを続けていくなら、一度はプレーオフで優勝を決めてみたい。
そう思わせるだけの特別さが、あの時間にはある。
Dear Wonderful Footgolf
静寂の中の一蹴りが、忘れられないドラマになる。
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